
地盤調査をしてもらったものの、結果に疑念が残るケースも少なくありません。そんな時に頼りになるのが「地盤調査のセカンドオピニオン」です。本記事では地盤調査の結果に納得できなかった際の対処法として、地盤調査のセカンドオピニオンを提案するとともに、その内容について詳しく解説します。
そもそも地盤調査では何を調べる?
戸建て住宅を新築する際に欠かせない工程の一つに「地盤調査」があります。これは建物の重さに地盤が耐えられるかを調べ、安全に建築できるかを判断するために行われるものです。とくに現在広く採用されているのが「スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)」と呼ばれる方法で、手動式の試験機を使って地盤の強度を測定します。
地盤調査の主な目的は、不同沈下(建物が片側に沈んで傾く現象)を防ぐことにあり、その結果をもとに地盤改良工事の必要性が判断されます。調査の際には、その場所の地形の区分、土地造成の情報や周辺環境に地盤沈下の兆候がないか、建物の重さによって地盤が沈まないかどうか(長期許容支持力度)、時間とともに土が圧縮されて沈下が進行しないか(沈下の検討)といった4つの要素が総合的に評価されます。
一方、一般的な地盤調査では、地震時に地盤がどのように揺れるかといった「地震リスク」に関する情報までは調べません。これを知るには「微動探査」と呼ばれる別の手法が用いられ、地盤の揺れやすさや共振の可能性を評価することができます。つまり、住宅の建築前に実施される地盤調査は、主に沈下リスクを見極めるものであり、地震に対する揺れやすさを調べるには別の追加調査が必要になるという点を理解しておくことが重要です。
地盤調査のセカンドオピニオンが必要になった背景
地盤のセカンドオピニオンが求められる背景には、地盤改良工事の必要性をめぐる判断のばらつきが挙げられます。地盤調査の結果に基づいて改良工事が「必要」と判断されても、実際には「不要」または「より小規模な工事で済むのではないか」といった疑問が生じるケースが多く見られます。その理由の一つに、調査結果の解釈が会社ごとに異なる点があります。
地盤改良の判断材料となるのは主に4つの項目ですが、その中で明確な基準があるのは「長期許容支持力度」のみです。その他の項目には明確な基準がなく、判断に一定の幅があるため、同じ地盤調査報告書を見ても異なる結論が導かれることがあるのです。とくに、長期許容支持力度の数値が「改良してもしなくてもよい」範囲にある場合は、地盤改良の要否は各社の判断に委ねられ、結果として判断が分かれるのが現実です。
こうした事情から、地盤調査に対して「セカンドオピニオン」を求める人が増えてきました。この考え方が広まったのは過去10年ほどで、それ以前は地盤改良工事を行う会社自身が地盤調査を行い、その流れで工事の受注につなげるというビジネスモデルが主流でした。調査費用は数万円程度であるのに対し、改良工事には数十万〜数百万円がかかるため、工事受注を前提とした判断が行われやすかったのです。
しかし近年では、改良工事を行わずに、不同沈下が発生した場合の「地盤補償」に特化した会社が増えてきました。これらの会社は、他社の調査結果を無償で再評価(セカンドオピニオン)し、改良工事が不要と判断した場合は有償で補償サービスを提供します。この新たなビジネスモデルにより、従来に比べて改良工事の判定が減少し、より適正な判断が広まりつつあります。現在では、無償で地盤調査データのセカンドオピニオンを提供する企業も多いです。これらの背景から、建築主が納得のいく判断を得るための選択肢として広く認知されるようになっています。
地盤調査の結果に疑問があった場合はどうするべきか
地盤調査の結果に疑問を持った場合、施主としてどのように対応すべきかを考える際に重要なのは、調査の仕組みや業界構造への理解です。地盤調査では、家屋の不同沈下を防ぐために地盤の強度や性質を確認し、その結果に基づいて「地盤改良工事」の要否が判断されます。
しかし、この改良の要否は、判定を行う会社の立場やビジネスモデルによって左右されることが少なくありません。たとえば、地盤補償を専門とする会社は、改良工事を行わずに済むと判断して補償を提供する傾向があります。一方、地盤改良工事を請け負う会社は、改良工事を推奨するモチベーションを持っており、判定がより「改良あり」に傾きやすくなる場合があります。このため、同じ地盤調査データであっても、会社ごとに異なる結論が導き出されることがあるのです。
ただし、改良工事が費用面で大きな負担になるとはいえ、安易に回避すべきではありません。地盤が軟弱なまま家を建ててしまえば、建物の傾きによる健康被害や資産価値の低下が生じるおそれがあります。その場合、工事そのものがたとえ補償があっても、修復には時間も手間もかかります。また、改良工事の内容次第では、液状化被害の軽減にもつながるケースも多いです。
たとえば、小口径鋼管杭を支持地盤まで確実に打ち込む工法は、その効果が期待できます。注意すべきなのは「営業ベタ」と呼ばれる業界用語に示されるような、不適切な改良不要判定です。これは、補償を売る目的で無理にベタ基礎と判定し、実際には改良が必要な地盤であるにもかかわらず、それを見送るケースを指します。こうした営業的な背景を知ることで、より中立的な判断ができるようになります。
結局のところ、セカンドオピニオンを活用することは有効ですが、その判定結果に一喜一憂するのはNGです。改良工法の内容や深さの妥当性までを含めて、住宅会社や地盤の専門家とていねいに相談しながら進めることが、安心できる家づくりにつながると言えるでしょう。
まとめ
地盤調査は住宅建築の安全性を左右する重要なステップですが、その判定には会社ごとの判断差が生じることもあります。とくに高額な地盤改良工事が必要とされた場合、「本当にその工事が必要なのか?」と疑問を抱くケースも少なくありません。そこで注目されているのが「セカンドオピニオン」です。近年は、調査結果を中立的に再評価し、改良工事の妥当性を見直すサービスを提供する企業が増えており、建築主が納得のいく選択をするための有効な手段となっています。ただし、工事回避が必ずしも正解とは限らず、結果を鵜呑みにせず、改良工法の内容やリスクも含めて専門家としっかり相談する姿勢が大切です。安心・納得の家づくりには、正しい情報と冷静な判断が欠かせません。