家づくりを進める中で「地盤改良工事」という言葉を耳にしたことがある方も多いかもしれません。しかし、実際にそれがどのような工事なのか、詳細に理解している方は少ないのではないでしょうか。そこで、今回は地盤改良工事の概要をはじめ、代表的な工法や費用の目安について詳しく解説します。これから家を建てる予定の方にとって、役立つ情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
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地盤改良工事とは?
地盤改良工事は、建物を建てるために土地の地盤を強化する作業です。地盤が弱かったり不安定だったりすると、建物の安全性や耐久性に影響を及ぼすことがあります。
この工事では、地盤を掘削して補強材を埋め込んだり、圧力を加えて地盤を固化させたりします。地盤を強化することで、建物の沈下や傾きのリスクを減らし、安定した基盤を提供するのです。
代表的な工法としては、表層改良や鋼管杭工法などがあり、土地の状況や場所に応じて最適な方法が選ばれます。地盤改良工事は、住宅やビルの建設において非常に重要な工程であり、建物の長期的な耐久性を確保するために欠かせません。
地盤改良工事の必要なケース
地盤改良工事が必要になるのは、土地の地盤が建物の重さに耐えられない場合です。たとえば、地盤が軟弱であったり、土壌が湿気を多く含んでいる場合、建物が沈下するリスクが高くなります。
また、過去に埋立地や湿地帯だった場所では、地盤の安定性が低いため、改良工事が欠かせません。さらに、地震や水害などの自然災害に備えるため、強化された地盤が必要とされることもあります。
具体的には、地耐力が20~30KN/㎡以下と判断された場合、地盤改良工事が必要となります。地盤調査を実施し、地耐力が基準に満たないと判明した場合は、工事を行うことが求められます。
マンションや大型ビルだけでなく、戸建て住宅の建築時にも地盤調査と改良工事は重要な工程となります。
地盤改良工事の種類
地盤改良工事にはさまざまな工法があります。ここでは、代表的な「表層改良工法」「柱状改良工法」「鋼管杭工法」の3つの工法について詳しく説明します。
表層改良工法
表層改良工法は、地盤の表面層に固化材を混ぜ込むことで地盤の強度を高める方法です。この工法は、土壌が軟弱でも深層改良が不要な場合に適しています。
具体的には、土壌にセメントや石灰などの固化材を混ぜて、混合機で均等に混ぜ合わせ、地盤を強化します。この方法により、地盤の沈下やひび割れを防ぎ、安定した基礎を作ることができます。
表層改良工法は工期が短く、費用も抑えられるため、住宅や小規模な建物の地盤改良でよく採用されます。
柱状改良工法
柱状改良工法は、地中にコンクリートの柱を注入して地盤の強度を向上させる方法です。この工法は、地盤が軟弱であったり、深層まで改良が必要な場合に有効です。
強固な支持層までコンクリート柱を注入し、その部分の土と一体化させて地盤を固めます。この工法は、建物の重さを均等に分散させ、沈下を防ぐ効果があります。
とくに、大規模な建物や高層ビルなどの重い構造物に対して適しており、安定した基盤を提供します。また、施工時に振動が少ないため、都市部などの環境に配慮した工法として広く利用されています。地盤調査の結果によっては、戸建て住宅にも適用されることがあります。
鋼管杭工法
鋼管杭工法は、柱状改良工法と似ていますが、コンクリートの柱の代わりに鋼管(鋼製の円筒形パイプ)を地中に打ち込み、強固な基盤を作る方法です。
この工法は、特に軟弱な地盤や深層に強度をもたせる必要がある場合に適しています。鋼管は非常に強度が高く、深い層に設置することで安定性を確保できます。
施工は、鋼管を地中深くまで打ち込み、その内部にコンクリートを注入して杭全体を強化します。この方法は、重い構造物の荷重をしっかりと支えることができるため、特に大規模な建物や高層ビル、橋梁などの建設に多く使われています。
地盤改良工事の費用
地盤改良工事の費用については、どの工法を選ぶか、地域や敷地面積によって異なるため、具体的な金額に悩む方も多いでしょう。たとえば、表層改良工法の場合、1坪あたり1~3万円程度が相場で、一般的な戸建て住宅であれば1棟あたり30~90万円程度の費用がかかります。
柱状改良工法は1坪あたり4~5万円程度で、戸建て住宅であれば100~150万円程度が目安となります。 また、鋼管杭工法は1坪あたり5~7万円程度が一般的で、120~200万円程度の費用がかかることが多いです。
なお、これらの費用は敷地面積や施工エリア、業者によってばらつきがあるため、上記の金額よりも安くなることもあれば、高くなることもあります。実際の費用については、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。
地盤改良工事を行うメリット
地盤改良工事には多くのメリットがあります。最も重要なのは、建物の安全性を確保できる点です。地盤が強化されることで、地盤沈下や建物の傾きのリスクを防ぐことができ、長期的な安定性を確保します。
また、地盤が強化されることによって、地震や台風などの自然災害への耐性も向上します。これにより、建物を守る役割を果たし、災害時のリスクを減少させることができます。
さらに、表層改良工法は改良深度が浅いため、比較的安価に工事を行うことができます。また、地中に混入物があっても施工可能なため、柔軟性のある工法です。 柱状改良工法も比較的低コストで実施でき、支持層がなくても施工できるため、場所を選ばずに使用できるというメリットがあります。
一方、鋼管杭工法は強い地盤を提供できるため、大規模なビルや高層建物の建設などで利用されることが多いです。支持層がある土地で施工可能で、地盤の強度がほかの工法よりも高いため、大規模な構造物に適しています。
地盤改良工事を行うデメリット
地盤改良工事には多くのメリットがありますが、デメリットについても気になる方が多いでしょう。調査の結果、地盤改良工事が必要と判断された場合、それは必ず施工しなければならないため、その点がひとつのデメリットといえます。
工事を実施することで、地盤を強化し、地盤沈下などのリスクを回避できるため、基本的には大きなデメリットはありません。むしろ、建物の安全性を確保するために必要不可欠な工程です。
ただし、工法の種類によっては、数百万円の費用がかかることがあります。そのため、建物の建築費とは別に予算を考慮する必要があり、この点がデメリットとして挙げられます。予算が限られている場合は、地盤改良工事の費用を含めた全体の計画を見直すことが大切です。
地盤改良工事が不要なケースもある?
地盤改良工事が不要なケースもあります。たとえば、標高が高い土地では改良が必要ないことが多いです。標高が高い場所は、標高が低い場所に比べて地盤が強い傾向があり、そのため地盤改良工事が不要なケースが多く見られます。このため、高級住宅街が高台に多く存在するのも、地盤が強い場所に位置していることと関係があると考えられています。
また、寺社仏閣周辺なども地盤が強い傾向があると言われています。これらの場所は、長年の歴史や文化によって安定した地盤が形成されていることが多いため、地盤改良が必要ない場合があります。
地盤改良工事は高額な費用がかかることがあるため、これから家を建てる際には、地盤改良が不要な土地を選ぶこともひとつの選択肢としておすすめです。
地盤改良を見据えた予算取り
家を建てる際には、建物や土地の価格だけでなく、地盤改良工事の費用についても予算に組み込んでおくことが重要です。土地や建物の価格が予算内であっても、後から高額な改良費が発生することがあります。このような予期しない費用が発生すると、家づくりの計画に影響を与えることになるため、早い段階で予算に含めておくことが大切です。
あらかじめ予算を余裕をもって取っておくことで、もし地盤改良工事が必要になったとしても、計画通りに進めることができます。予算取りをしっかり行い、地盤改良の必要性に備えることで、安心して家づくりを進められるでしょう。
まとめ
今回は、地盤改良工事の特徴や工法の種類について解説しました。工事には主に3つの工法があり、それぞれ特徴が異なります。調査の結果や、建物の重さ、さらに敷地状況によって適切な工法を選択しなければなりません。また、地盤沈下や建物の傾向リスクを防ぐためにも、調査によっては改良が必須であることを留意しておく必要があります。これから家を建てる方や工事について理解を深めたい方は、ぜひ今回紹介した概要や特徴を参考にしてください。