強度や構造に問題のある地盤を、建物を建設するのに適した地盤に作り変える工事を、地盤改良工事といいます。地盤改良工事にはさまざまな種類があり、それぞれにメリットと注意点があります。今回は、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管工法の3つについて詳しく解説します。気になる人はぜひ最後までご覧ください。
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表層改良工法
表層改良工法は、地盤改良における技術のひとつで、とくに浅い改良深度が求められる場合に有効です。
メリット
表層改良工法の大きなメリットは、工事費用が比較的リーズナブルであることです。
地盤改良の深度が浅いため、全体の施工コストが低く抑えられます。また、必要な重機が小型で済むため、機材の手配や運搬も簡単です。さらに、この工法は地中に存在するコンクリート片や石などの異物があっても施工可能です。
これにより、地盤改良が必要な場所が限られた場合でも柔軟に対応できる利点があります。
注意点
勾配のきつい土地では施工が難しい場合があります。
土地の勾配が急な場合、施工が難航し、効果的に改良できない可能性が高いです。また、地盤改良面よりも地下水位が高い土地に対しては、この工法が適用できないことがあります。地下水位が高いと、改良材が適切に混合されず、地盤改良の効果が減少するためです。
さらに、表層改良工法は施工者のスキルに大きく依存します。そのため、施工者が十分な実績がない場合、仕上がりの強度や品質に影響を与えることがあります。
向いている土地
表層改良工法がとくに向いている土地は、勾配があまりない場所です。
こうした条件が整っていると、工法の効果を最大限引き出しやすくなります。適切な条件のもとで施工されることで地盤改良の成果がしっかりと現れるため、土地の特性に応じた工法選定が重要です。
柱状改良工法
柱状改良工法は、地盤改良の方法のひとつで、とくに住宅の地盤改良工法として広く採用されています。
この工法にも、いくつかのメリットと注意点があります。
メリット
柱状改良工法の大きなメリットは、比較的リーズナブルなコストです。
比較的低コストで施工できるため、多くの住宅で採用されています。また、支持層が存在しない場合でも施工できる点も、柱状改良工法のメリットです。
このため、地盤が非常に軟弱で支持層が深い場合でも、地盤改良を施せます。これにより、さまざまな地盤条件に対応できる柔軟性をもっています。
注意点
一方で、柱状改良工法にはいくつかの注意点も存在します。
まず、特定の地盤条件においては、セメントが十分に固化しない「固化不良」が発生することがあります。とくに、有機質土などの特定の地盤条件では、セメントがうまく固まらず、改良効果が十分に得られない可能性が高いです。
このため、施工前に地盤の状態を十分に調査し、適切な対策を講じることが重要です。また、施工後には地盤の原状復帰が難しくなる点も要注意です。将来的に土地を売却したい場合、柱状改良工法による地盤改良が価格に影響を与える可能性があります。
将来的に土地を売るつもりがあるなら、地盤改良工法の選定を慎重に行いましょう。また、改良体が残るため、解体後に別の建物を施工する際には、新たな工法の検討が必要になることもあります。
向いている土地
柱状改良工法は、軟弱地盤で不同沈下の可能性がある土地に適しています。
地盤改良によって沈下や変形を防ぐことができるため、住宅の安定性を確保できます。また、将来的に土地を売却する予定がなく住み続けることを決めた土地であれば、撤去のことを考える必要がありません。
小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法は、とくに強度が求められる建物の基礎に利用されることが多い工法です。
この工法にはいくつかのメリットと注意点があります。
メリット
小口径鋼管杭工法の大きなメリットは、施工後の地盤強度が非常に高いことです。
鋼管杭を使用することで、地盤の強度を大幅に向上でき、3階建てなどの重量のある建物にも対応可能です。鋼管杭は地盤に深く打ち込まれるため、安定した支持層が得られ、建物の荷重をしっかりと支えられます。また、鋼管杭は耐久性が高く、長期間にわたって安定した地盤支持を提供します。
注意点
小口径鋼管杭工法は、支持層がないと施工が難しいです。
鋼管杭は支持層に達するまで打ち込む必要があり、支持層がない場所では十分な強度を確保できません。このため、地盤調査を行い、支持層の有無を確認することが重要です。また、工事中の騒音や振動が大きいこともデメリットとして挙げられます。
鋼管杭を打ち込む際には、重機を使用するため、周囲に対して騒音や振動が発生します。工事を始める前には、ご近所の方へ工事の時間帯や対応策について事前に説明しておきましょう。
さらに、同じ条件での工事の場合、柱状改良工法よりも高額になる傾向があります。鋼管杭の材料費や施工費用が比較的高いため、予算に応じた工法選定が必要です。
向いている土地
小口径鋼管杭工法は、比較的狭い土地で、支持層がある土地にとくに向いています。
支持層が確保できる場所であれば、鋼管杭による強固な基礎を作れます。これによって、重量のある建物にも対応可能です。支持層の深さや地盤の状態に応じた適切な工法選定が、施工の成功には不可欠です。
まとめ
地盤改良工事は、建物の安定性を確保するために欠かせない技術です。この記事では、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管杭工法の3つの主要な工法について詳しく解説しました。表層改良工法はコストがリーズナブルで施工が容易ですが、勾配や地下水位に影響を受けやすい点に注意が必要です。柱状改良工法は低コストで支持層がなくても対応可能ですが、固化不良や将来の撤去に伴うコストに注意が必要です。小口径鋼管杭工法は高い地盤強度を提供し、重量のある建物にも対応できますが、支持層の有無や工事中の騒音振動に留意する必要があります。それぞれの工法の特徴を理解し、土地の条件に最適な選択をすることで、効果的な地盤改良が実現できます。