
地盤調査で問題点が見つかった場合、地盤改良工事を行う必要があります。地盤改良工事にはいくつか種類があり、その中でも最もメジャーなのが、柱状改良工法です。本記事では、柱状改良工法の特徴やそのメリット・デメリットまで詳しく解説します。地盤改良工事の方法で悩んでいる人は、ぜひご一読ください。
柱状改良工法とは
柱状改良工法(ちゅうじょうかいりょうこうほう)は「深層混合処理工法」とも呼ばれる代表的な地盤改良技術の一つです。主に小規模から中規模の建築物を対象として採用されるもので、現地の軟弱地盤を改良し、建物を安定的に支えるために用いられます。
この工法では、地中に専用の機械を用いて掘削を行い、掘り進めながら地盤の土とセメント系の固化材を混ぜ合わせ、円柱状の支持体(改良体)を地中に構築します。この支持体が地盤と建物の間で力を分散し、不同沈下のリスクを抑える役割を果たすのです。柱状改良工法は、他の地盤改良法と比較して施工費用が比較的安価で、幅広い地盤条件に対応できるため、全国的にも広く普及しています。
とくに木造住宅や小規模ビルなどで採用されることが多く、一般住宅の基礎工事でもよく目にされる手法です。しかしながら、施工手順が比較的シンプルであるがゆえに、施工業者の技術力や経験の差が顕著に表れやすい点が課題とされています。実際、十分な混合が行われなかったり、設計通りの深度や径で施工されていない場合、完成後に地盤沈下などの不具合が発生する可能性も否定できません。そのため、施工業者選びや現場での品質管理が極めて重要となる工法といえるでしょう。
柱状改良工法のメリット
柱状改良工法は、地盤改良工法の中でも最も一般的かつ広く普及している手法の一つです。以下では、この工法のメリットについて詳しく解説します。
費用の抑制
この工法の大きなメリットの一つに「費用の抑制」があります。柱状改良工法は、シンプルな施工手順を特徴としており、特殊な技術や複雑な機械を必要としないため、他の地盤改良工法に比べてコストパフォーマンスに優れている点が魅力です。予算を抑えつつ、必要な地盤の強度を確保したい場合に適した選択肢といえるでしょう。
地盤状況に応じて柔軟に対応可能
また、柱状改良工法では、掘削翼で地中を掘削しながら、現地の土とセメント系固化材を撹拌し、柱状の補強体を形成します。この補強体の品質や直径は、使用する撹拌翼の大きさや形状によって異なり、地盤状況に応じた柔軟な対応が可能です。こうした性能を評価・証明することで「建築技術性能証明」を取得できる点も重要な利点です。
たとえば、サムシングでは「くし兵衛工法」や「コラムZ工法」など、性能証明を得た工法を複数採用しており、技術的な裏付けのある施工が可能となっています。
支持層がなくても対応可能
さらに、柱状改良工法は「支持層がない場合」にも対応できるケースがある点も特筆すべき点です。通常、地盤補強では杭の先端を固い支持層まで到達させて建物を支える「先端支持力」が重視されますが、柱状改良杭は軸径が大きく、杭の周囲に発生する「周面摩擦力」も非常に大きいです。そのため、場合によっては支持層に到達しなくても、十分な支持力を得ることができます。これにより、より多様な地盤条件にも対応できる柔軟性が生まれます。
柱状改良工法のデメリット
柱状改良工法は、その普及度の高さとは裏腹に、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。これらのデメリットを解消するため、近年では改良型の工法も多数開発されてきました。しかしながら、工法そのものの性質に加えて、施工を行う地盤業者の技術力や管理体制の差によって、改良の効果や安全性には大きな差が生じる可能性があります。とくに、改良後に地盤沈下などのトラブルが発生するリスクがある点は、重要な課題といえます。
固化不良のリスク
代表的なリスクの一つが「固化不良」です。柱状改良工法では、現地の土とセメント系固化材を混合して地中に柱状の補強体を築造しますが、このときに使用するセメント系固化材と土壌の相性が悪いと、うまく固まらないケースがあります。
とくに、火山灰質粘性土(ローム)や腐植土のように酸性が強い土壌は、セメントの固化反応を妨げる傾向があり、強度不足の原因となりやすいです。こうした固化不良が生じると、完成後に不同沈下が発生し、建物の構造に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
六価クロムの発生リスク
もう一つの懸念点として「六価クロムの発生リスク」が挙げられます。六価クロムは、土とセメント系固化材を混合する過程で、セメントの焼成段階における酸化反応によって生成される可能性のある有害物質です。通常は、固化したセメントに取り込まれるため外部に溶出することはほとんどありません。
しかし、もし固化が不完全であった場合には、六価クロムが土壌中に溶け出す危険性があります。これは環境汚染や健康被害のリスクにもつながるため、事前に「六価クロム溶出試験」を実施し、土と固化材の相性を確認することが不可欠です。試験結果をもとに、環境基準を満たす適切な固化材を選定する必要があります。
まとめ
柱状改良工法は、小・中規模建築物の地盤改良に広く用いられる代表的な手法で、コストを抑えつつ柔軟に対応できる点が大きな魅力です。特殊な機械を使わずに現地の土とセメント系固化材を混ぜて柱状の補強体を作ることで、不同沈下のリスクを軽減し、支持層がなくても安定した支持力を得られる場合があります。一方で、施工技術や土質との相性による固化不良や、有害物質である六価クロムの発生リスクも存在します。安全で確実な改良を実現するためには、信頼できる施工業者の選定と事前の綿密な調査・管理が不可欠です。柱状改良工法のメリット・デメリットを理解し、最適な地盤改良を目指しましょう。