土地に住宅を建てる前には、地盤調査という工事を行う必要があります。では、地盤調査とは一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、地盤調査についての基本的な知識とともに、調査方法や費用について解説をしていきます。
地盤調査とは
地盤調査とは、建物を建てる前にその土地の地盤がどれだけの重さに耐えられるか、また沈下にどれほど抵抗できるかを調べる検査のことです。これは、建築前に必須の工程であり、法律で義務付けられています。
地盤調査の結果は、建物ごとに適した基礎や構造を設計するために使用されます。もし調査の結果、その土地が建物の重量に耐えられないほど軟弱であると判断された場合は、地盤沈下を防ぐために「地盤改良」という工事が必要です。
地盤改良では、地面にセメント系硬化剤を混ぜたりコンクリートの杭を打ち込んだりして、地盤の強度を高めます。どれだけ頑丈な家を建てても、地盤沈下のリスクがあれば安心して住むことはできません。地盤調査は、安全に長く住み続けるために欠かせない重要な工程です。
地盤調査を行う方法
地盤調査には、いくつかの方法があります。今回は、一般的に行われている3種類について解説します。それぞれのメリットやデメリットもまとめてあるので、調査方法を選ぶ際の参考にしてください。
ボーリング調査
最初に解説するのは、ボーリング調査です。これはもっとも基本的な地盤調査方法で、主にマンションや地下室などの大規模な建築物を建てる際に行われます。
ボーリング調査では、ボーリング機械を使用して10メートルから数十メートルの深さまで穴を掘り、ハンマーを落下させて地盤の強度を測定します。作業には1日から数日かかるため、大規模な工事となります。
この調査では、地盤の締まり具合や強度を示すN値、砂質土や粘土といった土質、軟弱層や支持層の深さ、地下水位など、地盤の特性を詳しく調べます。また、室内での土質試験用の土も採取できるため、地盤調査だけでなく、液状化の判定や土壌汚染の調査も行うことができます。
ボーリング調査のメリットは、硬い地盤や深い層まで調査できること、広範囲の土地に適していることです。一方で、広い調査スペースが必要であることや機械音や打撃音などの騒音が発生するというデメリットがあります。
旧スウェーデン式サウザンディング試験(SWS試験)
次に紹介するのは、旧スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)です。この方法も、ボーリング調査と並んで基本的な地盤調査手法とされ、主に一般住宅の建築時に利用されています。
SWS試験には、手動式、半自動式、全自動式の調査機があり、全自動式を使用すれば30分程度で調査が完了します。調査は、先端がスクリュー状になった「ロッド」と呼ばれる鉄棒におもりをつけて回転させ、その回転数やおもりの重量からデータを収集するのです。
戸建住宅の場合、建物の四隅と中央の計5か所で調査を行います。
SWS試験は、比較的手軽に地盤の強度を測定できるのが特徴ですが簡易的な調査であるため、熟練技術者による補足的な資料調査が求められる場合もあります。
この試験のメリットは、短時間で調査が完了することや狭い土地や傾斜地でも調査が可能な点です。一方、デメリットとしては、土質の判定ができないこと、硬い地盤や深部の調査には適さないこと、そしてデータの信頼性が低い点が挙げられます。
平板載荷試験
最後に紹介するのは、平板載荷試験です。この方法は、主に路盤や路床、プレハブ建築などの際に使用されます。
この試験では、地盤に建物の重量に近い荷重を直接かけて、その沈下量を測定します。これにより、基礎直下の地盤支持力や地盤反力係数、沈下量などを評価することができます。
前述の2つの方法に比べると、あまり一般的ではありませんが、非常に信頼性の高い試験です。
平板載荷試験のメリットは、地盤の強度をより正確に把握できる点です。一方で、大規模な土地の調査には不向きであるというデメリットがあります。
地盤調査にかかる費用
地盤調査にかかる費用は、選択する調査方法によって異なります。また、調査結果によって地盤改良が必要になった場合、たとえば建築面積が20坪の場合、追加で50万円から100万円程度の費用が発生することがあります。
それでは、各調査方法ごとの費用について見ていきましょう。
まず、ボーリング調査の費用ですが、おおよそ25万円から30万円程度かかります。この方法は費用が高いため、一般住宅で採用されることは比較的少ないです。
次に、旧スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)についてです。この方法の費用は約5万円です。手頃な価格であるため、一般住宅の調査によく使用されています。
最後に、平板載荷試験の費用ですが、8万円から12万円程度かかります。これはボーリング調査とSWS試験の中間の価格帯です。
どの調査方法でも、地盤改良工事が必要かどうかは、調査結果が出るまで分かりません。場合によっては、100万円以上の工事費用がかかることも珍しくありません。そのため、事前に充分な資金を確保しておくことが重要です。
地盤調査の注意点
地盤調査は、建築費用に大きく影響するだけでなく、建物の安全性にも直接関わる重要な工程です。ここでは、地盤調査を行う際に注意すべき3つのポイントを解説します。これから住宅を建てようと考えている方は、これらの注意点を理解し、適切な地盤調査を行うようにしましょう。
調査会社の選び方
まず1つ目の注意点は、調査会社の選び方です。地盤調査を行う会社には、住宅の地盤調査を専門にしている会社や地熱など資源に関する調査を専門とする会社など、さまざまな種類があります。
そのため、調査会社を選ぶ際には、ホームページなどで過去の調査実績をしっかり確認し、住宅地盤の調査に特化した会社に依頼することが重要です。適切な会社を選ばないと、調査がスムーズに進まなかったり、正確な結果が得られなかったりするリスクがあります。
地盤調査報告書を発行してもらう
2つ目の注意点は、地盤調査報告書を必ず取得することです。地盤調査報告書とは、調査によって明らかになった地盤の詳細なデータが記載された書類であり、地盤調査が実施されたことの公式な証明にもなります。
この報告書は、住宅を建てる際に調査会社に依頼することで発行されますが、取得を忘れると後々のトラブルにつながる可能性があります。たとえば、将来土地を売却する際に、地盤に問題がないことを証明できなくなる可能性があるため、必ず報告書を受け取り、大切に保管しておきましょう。
費用が高額になる可能性がある
3つ目の注意点は、調査する敷地面積や地質の条件によって、費用が高額になる可能性があることです。
たとえば、もっともコストが低い旧スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)を予定していたとしても、調査対象の土地が広かったり、地質が非常に硬かったりすると、この方法が適用できない場合があります。その場合、より高額なボーリング調査を実施しなければならなくなることがあります。これにより、予算を超過する可能性が出てくるでしょう。
このように、地盤調査の費用は予想以上に高額になることがあるため、事前に費用の変動要因を充分に理解し、余裕をもった予算計画を立てることが重要です。