地盤調査を実施することで、地盤の種類を特定できます。しかし、地盤の種類がわかっても、その地盤の抱えるリスクや特徴を理解していなければ最適な地盤工事を選択できません。そこで今回は、地盤の種類ごとに想定されるリスクを詳しく解説します。地盤について詳しく理解し、建物や住宅を建てる際に役立ててみてはいかがでしょうか。
岩盤の特徴とリスク
まず、岩盤の特徴と想定されるリスクについて解説します。
岩盤には多くの種類があり、それぞれの強度も異なります。さらに、岩盤は風化作用を受けていることも多く、これによりその特性が変化します。一般的に岩盤は非常に堅固であり、建設においては杭基礎の支持層として利用されることが多いです。
しかし、古い年代に形成された岩盤は、長い年月の間に風化や浸食を受けることがあります。この風化により、岩盤の分布深度や新鮮な岩盤層の位置が変動することもあります。これは、杭基礎の施工管理を難しくする要因です。
具体的には、風化が進んだ岩盤は表面が劣化して強度が低下しているため、支持層としての信頼性が減少します。また、風化の程度や浸食の進行状況は場所によって異なるため、一様な地盤条件を期待することが難しくなります。
洪積層の特徴とリスク
次に、洪積層の特徴と想定されるリスクについて解説します。
台地の地盤がよいとされる理由は、台地を形成する洪積層が年代を経て安定した土質をもつためです。このため、洪積層が多く分布する台地上に建物を建設する場合、地盤に関する問題は少ないです。関東地方では、武蔵野台地や下総台地などが洪積台地に該当します。
これらの地盤は2万年以上前に形成された「礫層」や「砂層」およびその上に堆積した火山灰からなる「ローム層」で構成されています。これらの層は、非常に硬く安定した地盤です。
しかし、台地と低地の境界部分や丘陵地内の谷底低地では、腹付盛土や谷埋盛土による造成が行われている場合があります。これらの造成地では、大規模な地震が発生した際に地すべりなどの災害が起こるリスクがあります。
とくに盛土部分は元々の地盤よりも安定性が低いため、震動によって崩壊しやすい傾向があります。
沖積層の特徴とリスク
ここからは、沖積層の特徴と想定されるリスクについて詳細に解説します。
沖積層は、約2万年前から現在にかけて堆積した比較的新しい地層です。地質の種類に応じて「礫層」「砂層」「粘土層」「腐植土層」の4つに区分されます。これらの層はそれぞれ異なる性質をもち、地盤の特性やリスクに大きな影響を与えます。
表土
表土は、沖積層の最上部にある層のことを指します。
砂や粘土、植物が分解されて形成されています。表土は締まりがなく柔らかい土壌なので、建物を支えるには不向きです。
住宅建設の際には、盛土や埋土など人工的に造成された地盤も含まれますが、これらも表土の一部として扱われることがあります。表土は地盤としての安定性が低いため、建設には特別な注意が必要です。
粘土層
粘土層は、細かい粒子からなる土壌です。
沖積層内の粘土層は、とくに水分を多く含んでいるのが特徴です。この水分が地中の力の変化によって抜けると、粘土は収縮します。この現象を圧密と呼び、圧密が進行すると地盤が沈下してしまいます。
これを圧密沈下と呼び、粘土層のある地盤では地盤沈下のリスクが高くなるでしょう。新しい建物の荷重や、地下水位の低下によって圧密沈下が進行するため、建設時にはこの特性を考慮した設計と施工が必要です。
シルト層
シルト層は、粒子が粘土より大きく、細砂よりも小さい層です。
シルトは粘土と似た性質をもち、圧密沈下を起こす可能性があります。実務上シルトは「粘性土」と同等に扱われることが多く、粘土層と同様に圧密沈下のリスクがあります。シルト層も建設地盤として扱う際には注意が必要です。
砂層
砂層は、シルトよりも大きな粒子からなる地層です。
水はけがよく、含水分があっても排水が迅速に行われます。そのため、土の変形がすぐに生じて収束しやすいです。砂質土地盤での変形は即時沈下と呼ばれ、圧密沈下のような長期的な沈下はあまり発生しません。
しかし、地下水位が高く砂が緩く堆積している地域では、地震時に液状化が発生するリスクがあります。液状化は、砂層が振動によって流動的になり、地盤が沈下したり建物が傾いたりする現象です。これにより、大規模な地震が発生するとリスクが高くなるため注意が必要です。
砂礫層
砂礫層は、砂の中に小石が含まれている地層です。
砂層よりも地盤が強固であるため、建造物の基礎として適しています。砂礫層は砂質土地盤に比べて強度が高く、液状化のリスクも比較的低いです。そのため、安定した地盤条件を提供します。
まとめ
地盤の種類ごとにその特徴とリスクを理解することは、建設の成功に不可欠です。岩盤は堅固で基礎支持層に適しますが、風化や浸食が進むと強度が低下し、杭基礎の施工管理が難しくなります。洪積層は台地上に安定した土質を提供しますが、造成地や台地と低地の境界部分では地すべりのリスクが懸念事項です。沖積層は比較的新しい地層を指し、表土や粘土層、シルト層、砂層、砂礫層それぞれが異なるリスクをもちます。表土は支持力が低く、粘土層とシルト層は圧密沈下のリスクがあり、砂層は液状化のリスクを抱えています。砂礫層は強くて安定した地盤ですが、他の層と比較して液状化のリスクが低いです。地盤調査と理解を基に、適切な地盤工事を選択することで、安全で安定した建物の建設が可能です。