家屋や施設などの建物を建てる前に「地盤調査」をする必要があります。そして、地盤調査の結果によっては「地盤改良工事」を行わなければいけません。本記事では、地盤改良が必要な状況や、地盤改良において避けたいトラブルなどをまとめて解説していきます。これから土地の購入や建物の建設を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
地盤改良が必要な状況
地盤改良工事が必要となる主な状況として、地盤調査によって軟弱地盤が確認された場合、埋立地での建築計画がある場合、そして盛土が施された土地が挙げられます。
軟弱な地盤が見つかった場合
まず、建物を建てる前にはスクリューウエイト式貫入試験（旧スウェーデン式サウンディング試験）やボーリング試験などを用いて地盤調査が行われます。この調査により、支持力の低い軟弱な地層が見つかった場合、建物を安全に支えるために地盤改良が必要と判断されます。
埋立地は地盤改良がほぼ必須
また、埋立地においても改良工事はほぼ必須となります。埋立地は、もともと海や水辺であった場所に土を盛って造成された土地であるため、地盤の水分量が高く、地震時には液状化現象を引き起こしやすい性質があります。そのため、建物の沈下リスクを防ぐには、十分な支持力を持つ地層まで杭を打ち込むなどの対策が必要です。結果として、通常の土地に比べて地盤改良にかかる費用も高くなる傾向があります。
盛土が施されている場合
さらに、盛土が施された土地も注意が必要です。盛土に使用される土は締まりが悪く、支持力が不足しているケースが多いため、地盤沈下を引き起こす恐れがあります。また、コンクリート片などの異物が混入している可能性もあることから、地盤の性状を正確に把握するための詳細な調査と、それに基づいた地盤改良が不可欠です。このように、土地の性質によっては建物の安全性を確保するために、地盤改良が重要な役割を果たすのです。
地盤改良において避けたいトラブル
建築工事を行う際に注意すべきトラブルとして、とくに避けたいのが「近隣住民との摩擦」と「遺跡などの埋設物の発見」に関する問題です。
近隣住民トラブル
まず、工事中は重機の使用により大きな騒音や振動が発生し、加えて粉塵が周囲に飛散することがあります。こうした物理的な影響だけでなく、不特定多数の作業員が出入りすることによる喫煙やゴミ捨てなどのマナー問題も、近隣住民からのクレームにつながる恐れがあります。
こうした近隣トラブルは、事前に適切な対処を行うことで大きく軽減することが可能です。通常、工務店や施工業者が近隣住民に対して工事の概要を知らせるポスティングや挨拶まわりを行いますが、とくに隣接地に住む住民に対しては、施主本人が挨拶をして工事内容を説明することが望まれます。こうした一言が、住民の不安や不満を和らげ、スムーズな関係性の構築につながります。
埋設物の発見
また、見落としがちなトラブルの一つに「遺跡などの埋設物の発見」があります。計画地周辺で過去に遺跡が出土しているようなエリアでは、埋蔵文化財が地中に眠っている可能性があり、工事中にこれらが発見されると市区町村の担当部局へ報告し、その指示があるまで工事を中断しなければなりません。
さらに、発見された埋蔵物が重要な文化財であった場合には、施主が発掘調査の費用を負担しなければならないケースもあります。
工事までの実際の順序
建物を建設する際には、工事に至るまでにいくつかの重要なステップを踏む必要があります。まず最初に行うのが、建物の範囲や構造の決定です。これは、どのような間取りの建物を建てるかという設計面に加え、構造（木造、鉄骨、コンクリートなど）、建設範囲（敷地に対する広さや形状）、そして規模（階数など）といった要素を明確にする段階です。
これらの要素は、建物が地盤に与える荷重に大きく影響するため、後の地盤調査や改良工事の検討において非常に重要な前提となります。次に行うのが地盤調査です。これは、計画された建物の位置における地盤の強度や地層構成を把握するために実施され、主にスクリューウエイト式貫入試験（旧スウェーデン式サウンディング試験）が用いられます。
通常は建物の四隅と中央の5カ所を調査対象とし、軟弱地盤の深さや土層の性質など、建築に必要な詳細な地盤データを取得します。調査の結果、地盤が軟弱であると判明した場合には、地盤改良が必要です。この際には、地盤の性質や工事条件、さらには予算や工期などを総合的に考慮し、最も適した改良工法を選定します。改良方法には柱状改良や表層改良、鋼管杭などさまざまな種類があるため、選択には専門的な判断が求められます。
不明点がある場合は、必ず工務店や施工業者に説明を求めて納得した上で進めることが大切です。
まとめ
建物を建てる際、見落とされがちな地盤の状態は、実は建物の安全性や将来のトラブルに大きく関わる重要なポイントです。この記事では、軟弱地盤や埋立地、盛土された土地において地盤改良工事が必要となる理由をわかりやすく解説しました。また、工事中に起こりがちな近隣トラブルや埋設物発見による工事中断のリスク、さらには建築までの具体的なステップも紹介しています。これから大規模な工事の予定がある人は、ぜひ参考にしてください。
